「才能がある」とか「才能がない」とかよく言われます。あなたにとって才能とはなんですか。あなたの考えを600字以内で述べなさい。
(2019日本医科大学)
Version 1
「あなたにとって才能とはなんですか」とは奇妙な質問である。私にとっても誰にとっても、才能とは遺伝子に他ならないからである。この事実は「不都合な真実」であり、誰もが気がついていながら、公言することが一種のタブーとなっているのだ。
何年か前に、陸上競技世界選手権銅メダリスト為末大さんの発言が物議をかもした。「アスリートはその体に生まれるかどうか」で99%が決まる。努力すればできると成功者はいうけれど、「できる体に生まれることが大前提」だとSNS上で主張したのだ。これは20年もの長期に渡って限界まで努力を続け、世界の舞台で結果をだした人の発言であるから、重みがある。
たしかに、この発言は受け入れられずに多くの反発をまねいた。しかし、反論のほとんどは「そんなことを公言するな」「夢がなくなる」という感情的な反発であり、為末さんの主張自体は正論であると認めていた。もちろん努力はとても重要であるし、努力の価値は誰も否定できないけれど、ウサイン・ボルトを努力で生みだすことはほぼ不可能だと認めざるをえないのである。
したがって、私にとって才能とは自分探しの旅である。自分は本当は何が好きなのか、何に向いているのか、自問自答しながら自分の道を探していく。ちょうど為末さんが100メートルをあきらめて、自分に向いている400メートル障害で勝負をしたように。
(約600字)
2020年01月12日
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