2019年12月03日

小論文チャレンジ03

東京大学教養学部教養学科 平成31年度推薦入試
問題文は、こちら

(一)
アメリカではトランプ大統領が当選して以来、メキシコとの国境で緊張が高まっている。トランプ大統領は2016年に「アメリカファースト」を合言葉に当選した。主要な政策のひとつは移民の制限で、メキシコとの国境沿いに壁を建設しようとしている。2018年末には移民キャラバンとよばれる数千人の集団が、中米諸国からアメリカとの国境まで到着した。しかし、トランプ大統領は軍隊を投入してまで彼らの入国を阻止しようとした。
(約200字)※1行あたり40文字と考えました。

(二)
 「一九八九年の精神」とは、共産主義諸国がつぎつぎと崩壊して、ベルリンの壁に象徴されたイデオロギーの対立が終わり、西欧型の自由民主主義が普遍化したことを指している。筆者によると「一九八九年の精神」は西欧型政治経済システムの絶大な権威によって、世界の均質化と平和の実現を目指す構想であったという。

 西欧型の自由民主主義の第一ヴァージョンの時代には、イギリスのサッチャー首相とアメリカのレーガン大統領の進めた新自由主義が力をもった。新自由主義とは、民営化・規制緩和・市場原理主義によって経済をめざましく成長させて豊かさを実現するという考え方である。ところが、実際には豊かさが国民全員にしたたり落ちてくることはなく、グローバル化の勝ち組はアジア諸国の新興グローバル中間層と、豊かな国の超富裕層である。一方、最大の負け組は豊かな国の下位中間層であり、先進国においては超富裕層と下位中間層の間の格差はしだいに広がっている。

 中間層や下位中間層の不満を代弁するのは、かつては左翼の役割であった。しかし、イデオロギーの対立が終わって左翼は力を失い、移民排斥を主張するポピュリストが支持されるようになったのである。(一)で例を挙げたように、ポピュリストが力をもつとともに、大小さまざまな緊張が高まっている。つまり、「一九八九年の精神」の理念である「世界の均質化と平和の実現」とは正反対に、格差は拡大していき、緊張関係はますます高まっていきつつあるのだ。第一ヴァージョンの失敗は明らかである。

 第二ヴァージョンの時代において、世界の均質化と平和を実現するには、新しい意思決定システムが必要である。第一ヴァージョンの最大の問題点は、大衆が正確な判断材料をもっておらず、せん情的な言葉におどらされて合理的な判断ができないことである。その結果、長期的には自分の不利になる政党に投票してしまうのである。その根本原因には、一部の政策決定者たちに情報が独占されていることと、大衆が政府の活動を監視できていないことがある。私の構想は、デジタル民主主義である。これは政府の情報公開と、より多くの市民の政治参加を特徴としている。勝ち組のひとつである台湾の成功に見習うことである。 その好例は 台湾には オードリー・タンという若きデジタル大臣がいる台湾である。彼女は超天才プログラマーとしても知られており、つぎつぎと画期的な意思決定支援システムを開発している。インターネットを活用して政府の透明化を推進しており、彼女のメールはすべて公開されているという。市民と議論できる環境を構築して対話の実現に取り組んでいるし、フェイクニュースへの対応でも実績をあげている。

 以上のように政府を透明化し、より多くの市民との対話を実現することによって、新たな形で社会問題を解決していくことができる。このデジタル化された意思決定支援システムによるデジタル民主主義こそが、世界の均質化と平和を実現するための起爆剤になると私は考える。
(約1200字)※赤字は、お湯先生のご指摘にもとづき考えなおした部分です。
posted by a cat at 19:27| Comment(0) | 日本語小論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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