2019年12月15日

小論文チャレンジ05-1

「過去」、「現在」、「未来」、の3つの言葉を、それぞれ、他の言葉で言い換えなさい。そして、なぜその言葉で言い換えたのか、その理由を述べなさい。(600字以上800字以内)
(京都工芸繊維大学 工芸科学部 設計工学域 デザイン工学課程)

Version 1
 時間の流れには時計で測定できる客観的なものと、そうではない主観的なものがある。「過去」「現在」「未来」という言葉は、ヒトがとらえた主観的な時間の流れを表している。私はこの3つをそれぞれ、「記憶」「入力」「出力」と言い換えたい。なぜなら、時間の流れをとらえるのはヒトの脳であり、脳の本質は情報を処理し保存するきわめて複雑なコンピュータだからである。

 まず「過去」は「記憶」と言い換えることができる。「過去」とは、脳が処理した情報をたくわえたものである。コンピュータにたとえればハードディスクに書き込まれたデータであり、必要に応じて検索して、つまりは思い出して使うことができる。祖先から進化の過程を通じて遺伝子に組み込まれたプログラムも一種の過去の「記憶」であり、コンピュータのROMのようなものである。

 次に「現在」は「入力」と言い換えることができる。ヒトはおもに視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚の五感を通じて外界と接触していて、日々新しいデータをインプットしている。これらのデータは言語や映像、あるいは身体感覚として解釈・処理・学習され、必要なものは「記憶」されていく。「記憶」されるのは言語とは限らず、映像や音声などの場合もあるし、自転車の乗り方など身体感覚による技能も含まれている。

 最後に「未来」は「出力」と言い換えることができる。日々大量のデータを「入力」しそれを処理することによって、しだいに脳の中には世界観ができあがる。世界観とは、将来の予測を「出力」するアルゴリズムである。たとえていえば、現在の気圧や風・雲の分布などのデータを使えば、明日の天気が予測できるようなものである。

 以上のように、ヒトの脳を複雑なコンピュータだとみなせば、「過去」「現在」「未来」という言葉を「記憶」「入力」「出力」で置き換えることができると私は考える。
(約800字)

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2019年12月11日

小論文チャレンジ04

今日、仏像は美術館や博物館に展示されたり、美術番組で取り上げられたりすることが多いが、「仏像」は美術品なのか、人の心のあり方も含め、あなたの思うところを800字以内で論述せよ。
(2016倉敷芸術科学大学 芸術学部 デザイン芸術学科・メディア映像学科)

 ここでは、美術品とは「作者が自己を表現して、鑑賞する人の心を動かすものである」ととらえることにする。だとすると、仏像が美術品かどうかは、見る人や時代とともに変わることになる。これは、次の3段階で変化してきたと私は考える。

 まず、日本に仏教が伝来して間もない時代には、仏像は信仰のために作られたものであり、決して美術品ではなかった。作者不詳のものが多いことからわかるように、仏像は作者の自己表現ではなかったのである。仏像を彫っているときに作者の頭にあったのは、人知を超えた何か宗教的なものであろう。また、お寺におかれた後も、信徒は仏像が美しいから訪れるのではなく、信仰の対象として訪れていたのである。

 しかし、時代がへて仏師が職業として成り立つようになると、彼らは名前を残すようになる。つまり、仏像制作が「作者の自己表現」であるとも言えるようになってきた。仏像が美術品となる条件がひとつ整ったのである。また、近現代には仏教への信仰はしだいに弱まってきたが、もうひとつの条件である「仏像を美術品として鑑賞する人たち」は増えてきた。したがって、美術に興味のある人のために仏像が博物館にあるとき、あるいはテレビ番組で取り上げられるときには、仏像は世俗化していて美術品である。

 ただし、現代においても、見る人が変われば仏像は美術品ではなくなる。マーケット社会といわれるように、今はあらゆるものが市場で値段をつけられる時代である。例えば、ネットオークションで売買されるときや、美的価値にはあまり興味がない観光客に秘仏が公開されるときには、仏像は美術品ではなく単なる商品となっている。

 以上のように、仏像が美術品かどうかは、見る人の心のあり方や時代とともに変わってきたし、今後も変わっていくだろうと私は考える。(約780字)
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2019年12月03日

小論文チャレンジ03

東京大学教養学部教養学科 平成31年度推薦入試
問題文は、こちら

(一)
アメリカではトランプ大統領が当選して以来、メキシコとの国境で緊張が高まっている。トランプ大統領は2016年に「アメリカファースト」を合言葉に当選した。主要な政策のひとつは移民の制限で、メキシコとの国境沿いに壁を建設しようとしている。2018年末には移民キャラバンとよばれる数千人の集団が、中米諸国からアメリカとの国境まで到着した。しかし、トランプ大統領は軍隊を投入してまで彼らの入国を阻止しようとした。
(約200字)※1行あたり40文字と考えました。

(二)
 「一九八九年の精神」とは、共産主義諸国がつぎつぎと崩壊して、ベルリンの壁に象徴されたイデオロギーの対立が終わり、西欧型の自由民主主義が普遍化したことを指している。筆者によると「一九八九年の精神」は西欧型政治経済システムの絶大な権威によって、世界の均質化と平和の実現を目指す構想であったという。

 西欧型の自由民主主義の第一ヴァージョンの時代には、イギリスのサッチャー首相とアメリカのレーガン大統領の進めた新自由主義が力をもった。新自由主義とは、民営化・規制緩和・市場原理主義によって経済をめざましく成長させて豊かさを実現するという考え方である。ところが、実際には豊かさが国民全員にしたたり落ちてくることはなく、グローバル化の勝ち組はアジア諸国の新興グローバル中間層と、豊かな国の超富裕層である。一方、最大の負け組は豊かな国の下位中間層であり、先進国においては超富裕層と下位中間層の間の格差はしだいに広がっている。

 中間層や下位中間層の不満を代弁するのは、かつては左翼の役割であった。しかし、イデオロギーの対立が終わって左翼は力を失い、移民排斥を主張するポピュリストが支持されるようになったのである。(一)で例を挙げたように、ポピュリストが力をもつとともに、大小さまざまな緊張が高まっている。つまり、「一九八九年の精神」の理念である「世界の均質化と平和の実現」とは正反対に、格差は拡大していき、緊張関係はますます高まっていきつつあるのだ。第一ヴァージョンの失敗は明らかである。

 第二ヴァージョンの時代において、世界の均質化と平和を実現するには、新しい意思決定システムが必要である。第一ヴァージョンの最大の問題点は、大衆が正確な判断材料をもっておらず、せん情的な言葉におどらされて合理的な判断ができないことである。その結果、長期的には自分の不利になる政党に投票してしまうのである。その根本原因には、一部の政策決定者たちに情報が独占されていることと、大衆が政府の活動を監視できていないことがある。私の構想は、デジタル民主主義である。これは政府の情報公開と、より多くの市民の政治参加を特徴としている。勝ち組のひとつである台湾の成功に見習うことである。 その好例は 台湾には オードリー・タンという若きデジタル大臣がいる台湾である。彼女は超天才プログラマーとしても知られており、つぎつぎと画期的な意思決定支援システムを開発している。インターネットを活用して政府の透明化を推進しており、彼女のメールはすべて公開されているという。市民と議論できる環境を構築して対話の実現に取り組んでいるし、フェイクニュースへの対応でも実績をあげている。

 以上のように政府を透明化し、より多くの市民との対話を実現することによって、新たな形で社会問題を解決していくことができる。このデジタル化された意思決定支援システムによるデジタル民主主義こそが、世界の均質化と平和を実現するための起爆剤になると私は考える。
(約1200字)※赤字は、お湯先生のご指摘にもとづき考えなおした部分です。
posted by a cat at 19:27| Comment(0) | 日本語小論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする